保険診療適用の肥満症治療薬ウゴービ注とオゼンピック注の相違

ウゴービとオゼンピックの相違

GLP-1受容体作動薬のウゴービとオゼンピックは同一成分の注射薬です。

治療の対象疾患、つまり適応症がウゴービは肥満症、オゼンピックは2型糖尿病と異なるだけ。

レストランで例えるならば、盛り付ける量と皿を少し変えただけの同一料理を、昼に提供すればランチという名前に、夜に提供すればでディナーという名前に変わるようなものです。

オゼンピックは1本のペン型注射器に、セマグルチドという有効成分が2mg入っていて、任意の量を複数回注射(例えば0.5mg✕2、1mg✕1)することが可能です。

一方、ウゴービは使い捨ての注射器1本に0.25mg 、0.5mg 、1.0mg 、1.7mg 、2.4mgのいずれかの量のセマグルチドが含まれていて1回で使い切ります。

オゼンピックは2型糖尿病と診断された方全てに適応がありますが、実際はインスリン分泌能がある程度保たれた、肥満ないしは肥満傾向の方に処方します。

ウゴービを使用するには

一方ウゴービは肥満症の適応です。

肥満症とはただ太っているだけの肥満とは異なり、次の条件が必要です。

高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、

① BMIが35kg/m2以上であること、または

② BMIが27kg/m2以上であり、次の11のうち2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する

・耐糖能障害 (2型糖尿病、耐糖能異常)
・脂質異常症(高脂血症)
・高血圧症
・高尿酸血症(痛風も含む)
・冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)
・脳梗塞または一過性脳虚血発作
・非アルコール性脂肪性肝疾患
・月経異常または女性不妊
・閉塞性睡眠時無呼吸症候群
・運動器疾患
・肥満関連腎臓病

これらの基準を満たしてもただちにウゴービを使用できるわけではありません。

厚生労働省は、最適使用推進ガイドラインを満たす施設でのみの使用を想定しています。

このガイドラインを満たす施設は、肥満症治療に関連する学会(日本糖尿病学会、日本内分泌学会、日本循環器学会)の専門医が常勤している教育研修施設。

これは事実上大学病院などの大規模な基幹病院に限られます。

しかも、これらの病院においてウゴービを使用する前に、食事療法・運動療法を6ヵ月以上実施しても十分な効果が得られない患者であること、更に、この間に2ヵ月に1回以上の頻度で管理栄養士による栄養指導を受けた患者であること、という条件が加えられています。

かなりハードルが高いですね。

最適な肥満治療

当クリニックは、日本糖尿病学会と日本内分泌学会の専門医が在籍しているものの教育研修施設ではないためウゴービの処方は行っていません。

肥満症患者さんに対しては、上記のような条件を勘案しウゴービの使用が適切かどうかを判断した上で、希望があれば大規模な医療機関に紹介することを検討しています。

それ以外の肥満症では、糖尿病があればウゴービ以外のオゼンピックやマンジャロのようなGLP-1受容体作動薬を使用するのがよいでしょう。

糖尿病がなければ、サノレックスや漢方薬、食事療法・運動療法を継続しつつ、自費診療も含めて個々のライフスタイルに合った最適な治療法を見つけていきましょう。

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