糖質制限ダイエットの光と影

2023年07月16日 07:45

糖質制限ダイエットの光ー体重減少効果

「タンパク質は乏しいがカロリーの豊富な食環境では、ヒトはタンパク質の摂取ターゲットを達成しようとして、炭水化物と脂肪を過剰摂取する。だが高タンパク質食しか得られない場合は、炭水化物と脂肪を過少摂取する」(『食欲人』(デイヴィッド・ローベンハイマー, スティーヴン・J・シンプソン, 櫻井 祐子 著)より

超加工食品のようなタンパク質比率の小さい食品を主に摂っているとやがて体重増加を招き、高タンパク食は体重減少につながることについて前回お話しました。

今回のテーマの糖質制限食は、そのまま高タンパク質・高脂肪食と読み替えてよいでしょう。

糖質制限ダイエットで痩せた!という友人、知人をあなたの周りでも見かけませんか?

糖質制限食は高タンパク食を摂ることになるので食欲は抑えられて、結果として摂取エネルギーが減少するため体重減少効果をもたらしてくれるのです。

「炭水化物(糖質)以外は、制限なく何でも好きなだけ食べて良い」という巷に広がる糖質制限ダイエットの本質はここにあると考えます。

では、なんの弊害もなく痩せることができるのでしょうか?

糖質制限ダイエットの影ータンパク質中毒

「ウサギ飢餓」

この言葉を初めて知る人も多いでしょう。

『ウィキペディア(Wikipedia)』によると、

「ウサギの肉は脂肪が少なく、そのほとんどがタンパク質で構成されており、それだけを食べ続けると中毒症状を惹き起こす食べ物である点に由来する。過酷な寒冷地に生息している動物たちも、同じように痩せていく。報告されている症状として、最初は吐き気や疲労感に襲われ、下痢を起こし、最終的には死に至る。」

タンパク質摂取比率が35%を超える場合、高アミノ酸血症、高アンモニア血症、高インスリン血症、吐き気、下痢などの症状に続き「ウサギ飢餓」に至る危険があるのです。

このような症状が出るのは、摂取したタンパク質を処理するため腎臓に負担がかかるからです。

タンパク質の過剰摂取は危険であることがわかります。

腎臓病を抱えている方、糖尿病・肝臓病が進行している方、妊婦の方、ご高齢の方などは決して糖質制限ダイエットを試みようとしないでくださいね。

糖質制限食の影ー過剰なタンパク質は老化を促進

近年高タンパク食と寿命との関係についていろいろな知見が寄せられています。

ハエやマウスの実験では、高タンパク食/低炭水化物食グループの寿命が短かいことが知られています。

動物実験だけでなく、ヒトでの研究も!

米国での大規模な疫学研究では、高タンパク食摂取グループの(糖尿病を発症して死亡までの)寿命が短いというデータが2014年に報告されました。

ではなぜ高タンパク食は寿命に悪影響を及ぼすのでしょうか?

その正体が徐々に明らかになってきています。

・ 「欠陥タンパク質」の蓄積

  タンパク質を過剰に摂取すると細胞内のタンパク質合成の速度が上がり、その処理速度が上がるほど「欠陥タンパク質」が細胞内に蓄積して身体に害をもたらす。

・ 「長寿回路」の停止

 寿命を延ばし老化を遅らせる働きのある「テロメア」の長さが高タンパク質食では短くなる、つまり「長寿経路」が停止する。

ここまでお読みいただいていかがでしょうか?

それでもまだあなたは、

「炭水化物以外は、制限なく何でも好きなだけ食べて良い」

このような糖質制限ダイエットを行いますか?

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