健康と美容に役立つ油、避けたい油

脂肪酸の三大原則

肥満、生活習慣病ではとかく悪者にされがちな油。

その中には必ず摂取しなければならない油もある一方、健康に良さそうで良くない油、その存在の気配すら感じさせないのに危険な油まであることをご存知でしょうか?

今回と次回はそんな油たちの特徴を解き明かします。

油の特徴はそれを構成する脂肪酸で決まり、次の3大原則があります。

常温で個体の飽和脂肪酸は肉に多く含まれ、過剰摂取により動脈硬化を促進。

常温で液体の不飽和脂肪酸は植物に多く含まれ、適量摂取により動脈硬化を予防。

必須脂肪酸:体内で合成することができないため食事から摂取する必要がある不飽和脂肪酸。

では代表的な不飽和脂肪酸を順に解説します。

n-3系脂肪酸(オメガ3)

n-3系脂肪酸には、α-リノレン酸、EPA、DHAがあります。

α-リノレン酸は必須脂肪酸の一種で、特にアマニ油やえごま油に多く含まれ、細胞膜の構成成分です。

体内ではEPAを経てDHAに変化します。

EPAとDHAはさばやいわしなどの青魚に多く含まれていて、 

血液中の中性脂肪を低下させる

血液の流れをスムーズする

などの働きにより、動脈硬化の進展を防いで心筋梗塞や脳梗塞を予防する効果が認められています。

また、白血球の活性化を抑制して、炎症を抑える働きも知られています。

1日に必要なn-3系脂肪酸はどれほどでしょうか?

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」(厚生労働省)によると1日2g。

この量は、ちょうどサバ缶やイワシ缶(100g)の一缶に当たります。

しかし昨今は日本人の魚の摂取量が減少傾向。

このため脂肪酸の中で最も不足しがちです。

意識して食べるようにしましょう。

「でも青魚はちょっと苦手・・・」

こんな方はアマニ油かえごま油を。

小さじ1杯で必要量を賄うことができます。

n-6系脂肪酸(オメガ6)

リノール酸に代表されるn-6系脂肪酸は生命の維持に不可欠な生理活性物質のもととなる成分。

大豆油、コーン油、ごま油、なたね油の順に多く含まれています。

一般にサラダ油と呼ばれているおなじみの油たちです。

n-6系は必須脂肪酸であるため積極的に摂る必要があるものの、食卓に上がる肉類を除いたほとんどの油はサラダ油で、フライや炒めもの、ドレッシングなどからふんだんに口にしています。

このため不足するどころか現代の日本では過剰摂取になっています。

実はこのことが厄介な問題を引き起こしているのです。

n-6脂肪酸とn-3脂肪酸は代謝において競合するため、摂取バランスがとても重要。

具体的にはn-6は白血球を活性化して病原菌と戦う働きをしますが、n-3は反対に白血球を抑制して炎症を抑える働きをします。

このためn-3とn-6のバランスが、健康には欠かせないのです。

n-6が過剰になると白血球を暴走させ、さらには病原菌のような外敵ではなく、自分の細胞も攻撃してしまう!

n-6過剰状態が続くと、血管の壁が傷つきそこにコレステロールなどが溜まって動脈硬化が起きたりや、アトピー・花粉症などのアレルギーが起きたりすると考えられています。

では一体n-3とn-6脂肪酸はどの程度摂取したら良いでしょうか?

世界中で大規模疫学調査が行われましたが、そのうちの福岡県久山町研究によると

n-3:n-6=1:2

このバランスの食事のとき最も心臓病での死亡リスクが低くなることが明らかにされました。

現在のわたしたちはどれ程のn-6脂肪酸を摂っているのでしょう?

およそn-3:n-6=1:10の割合でn-6過剰摂取とのことです。

昨今の食生活を振り返ると納得の割合ですね。

n-6脂肪酸を多く含むフライや炒め物、ドレッシングなどのサラダ油を控えましょう!

青魚を積極的に摂りましょう!

でも家庭での料理や外食でサラダ油は頻繁に登場しますが、どうしたら良いのでしょう?

サラダ油を使用するときは比較的n-6脂肪酸が少ないなたね油か米油の使用を心がけるとともに、生野菜などにはサラダ油や市販のドレッシングではなくオリーブオイルに変更するなどを試みてはいかがでしょうか。

n-9系脂肪酸(オメガ9)

n-9系脂肪酸の代表は、オレイン酸。

オレイン酸は心筋梗塞などの冠動脈性心疾患のリスク低減に大変効果的。

このオレイン酸を多く含む油がオリーブオイルです。

オリーブオイルは日本規格のサラダ油には属さず、n-6脂肪酸の含有量はごくわずか。

世界無形文化遺産に登録された地中海食には、このオリーブオイルがふんだんに使用されています。

地中海沿岸の国の人々は、高脂肪食にもかかわらず欧米人に比べ狭心症や心筋梗塞などの動脈硬化症が少ない理由のひとつは、食事からのn-6が少なくn-9脂肪酸を多く含むオリーブオイルを使用しているからだと考えられています。

以上の知見から現代日本で健康と美容を意識した油のとり方をまとめてみましょう。

① 飽和脂肪酸はすでに過剰摂取。タンパク質源は肉類から魚・豆類へ変更を。

② n-3脂肪酸は摂取不足。青魚を中心とした魚類を積極的に、苦手な人はえごま油かアマニ油を毎日小さじ1杯。

③ n-6脂肪酸はフライ、炒め物などから過剰摂取。サラダ油(大豆油、コーン油)の使用は控え、生野菜などにはオリーブオイルで置き換えも。

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