ダイエット目的でのSGLT2阻害薬はお勧めしません!

2024年03月18日 08:03

SGLT2阻害薬でダイエット?

フォシーガ、ジャディアンス、ルセフィ・・・

これらはSGLT2阻害薬と呼ばれる糖尿病治療薬。

腎臓からブドウ糖を排泄するお薬です。

1日におよそ100gのブドウ糖、つまり400kcalを体の外に出す作用があります。

では、この薬を毎日飲めば我慢しないで簡単にダイエットができるのでしょうか?

インスリン不足により過剰のブドウ糖が腎臓から排泄される様子

SGLT2阻害薬で毎月1.5kg減量できる?

はじめに結論からお話します。

我慢できずに食べ過ぎに走る糖尿病でない人が、SGLT2阻害薬を服用してダイエットを試みるのは決してお勧めできません。

その理由を説明します。

脂肪組織1kgはおよそ7000kcalのエネルギーを保持しています。

SGLT2阻害薬を服用して仮に1日88gのブドウ糖が排泄されるとすると、ブドウ糖は1g4kcalだから、1日に88✕4=352kcal、1ヶ月で352✕30=10560kcalのカロリー減で、すべてが脂肪組織の減少につながると仮定して、体重は1.5kg減る計算になります。

実際糖尿病患者さんがこのお薬を服用すると、数ヶ月で2から3kgの体重が減少することが多い。

しかしその後は一向に体重は減らず、むしろ増加する例も少なくありません。

なぜこのような現象が起きるのでしょうか?

SGLT2阻害薬で過食に?

その理由は、薬を服用する前よりもむしろ過食になるからだと考えられています。

SGLT2阻害薬は腎臓からブドウ糖が漏れ出ていくお薬です。

一方ブドウ糖は脳にとって最も大切なエネルギー源。

このため脳はブドウ糖が排泄されると、

「大変だ!糖質欠乏だ!エネルギーが無くなってしまう!」

勘違いします。

このように誤解した脳は、私たちにもっと糖質を摂取するように働きかけます。

これにより以前にも増して過食に走り、一旦減少した体重もそれ以上は減少することなく、人によってはむしろ服薬前よりも体重が増えてしまう場合も珍しくありません。

実際、動物実験においてSGLT2阻害薬投与によって摂食量が増加したという研究があります。

人での研究では、プラセボグループに比べてSGLT2阻害薬を服用したグループは、食事療法の指導を受けても外発性摂食行動(空腹でないにも関わらず、食べ物の見た目や味、香りなどの外的要素から食欲を刺激され、食べ物を摂取してしまう行動)が抑制されず、砂糖などの炭水化物の摂取量を減らすことができないという結果(糖尿病 63(3):110~118,2020)も報告されています。

その上、SGLT2阻害薬によって体重が減少しても、糖質不足の状態ではエネルギー供給が体脂肪分解のみでは間に合わなくなり、筋肉を分解して供給する可能性が出てきます。

これではきれいに痩せることができませんね。

朝食とタンパク質を忘れないで

ダイエットの基本はいかに体脂肪を減らすかがポイント。

そのためには運動によりエネルギー消費を増やして体脂肪を燃焼させ、食べ過ぎを防いでエネルギーの過剰な流入を止めることにつきます。

食事療法のポイントは炭水化物を制限しようとするのではなく、意識してタンパク質摂取に務めることです。

人は必要なタンパク質量を摂取するとそれ以上は食べたいという気持ちが少なくなるからです。

朝食や昼食にも肉や魚なら100グラム程度、その他乳製品、卵、大豆製品などで毎食タンパク質として20から30g摂取しましょう。

特に朝食のタンパク質が不足している人が目立ちます。

現在朝食を食べないか、少ししか食べないにもかかわらず肥満の人は、朝食を摂ることからスタートしてください。

それでも減量が困難な場合は、お薬による治療を検討すると良いでしょう。

糖尿病の方なら、GLP-1受容体作動薬やメトホルミンのような食欲抑制作用を伴うお薬を使用することにより、血糖値の改善と食事制限も同時に行うことが期待できます。

糖尿病のない肥満症の方は、保険適用があれば食欲抑制薬サノレックスや漢方薬などを併用すると良いでしょう。

以上のように、ダイエットのためにSGLT2阻害薬を用いて減量を試みることは適切な方法でないことをお話ししました。

ただし誤解のないようにしていただきたい点は、フォシーガ、ジャズダンスなどのSGLT2阻害薬は適切に使用することにより、糖尿病治療薬としてだけでなく、心臓病腎臓病治療薬としても大変優れた薬であり、私も糖尿病患者さんに処方することが多いお薬のひとつであることを申し添えます。


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