アライ(内臓脂肪減少薬)のメリット・デメリット

2024年04月01日 15:40

内臓脂肪減少薬 アライとは?

日本国内初の内臓脂肪減少薬アライが薬局で購入できるようになります。

この内臓脂肪減少薬アライとは、どんなお薬でしょうか?

また、この薬を飲むことでどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

まずはじめに、このお薬がどのようにして効果を発揮するのかを紐解きます。

アライの有効成分は、オルリスタット。

カプセル状で1日3回、食事中または食後に服用します。

食物に含まれる脂肪は、膵臓から分泌される脂肪分解酵素リパーゼによって脂肪酸とグリセロールに分解されてから腸管から吸収。

オルリスタットは、この脂肪分解酵素リパーゼの働きを阻害して、腸管からの脂肪吸収を抑おさえます。

吸収されなかった脂肪は便として排泄。

排泄される脂肪は摂取量の約25%と報告されています。

このようなオルリスタットの作用メカニズムからこの薬の内臓脂肪減少作用は、食事中の脂肪のうち約25%を排泄することによって、摂取カロリーを減少させる薬と解釈できます。

摂取カロリーの減少の一部が内臓脂肪の減少に繋がっていくということでしょう。

添付文書にはアライの効能は、腹部が太めな方の内臓脂肪および腹囲の減少(生活習慣改善の取り組みを行っている場合に限る)、と記載されています。

では、実際服用を希望する方にとってこのアライはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

メリット1 脂肪分過多の人に効果的?

薬の作用機序から考えて、脂肪分の多い食事を食べている人により効果が期待できます。

国民栄養調査によると、日本人の脂肪エネルギー比率(総摂取エネルギーのうち脂質から摂取したエネルギーの占める割合)は、4人に3人が30%未満です。

ここで、いつも脂肪分多い食事をしているAさんは、1日総摂取エネルギー2400kcal、脂肪エネルギー比率40%であるとします。

Aさんがとる1日の脂肪からのカロリーは960kcall。

アライを服用するとこのうち25%が排泄されるから、脂肪排泄によるカロリーは960×0.25≒240kcall。

このカロリーが全て内蔵脂肪燃焼に置き変わったと仮定すると、脂肪組織1kgが燃焼すると約7000kcalだから、内臓脂肪の減少は1ヶ月で、240×30÷7000≒1.0kg、脂肪好きなAさんなら、1ヶ月で1kg減ることになります。

実際には排泄された脂肪がそのまま全て内臓脂肪減少に繋がるわけではないことを考慮する必要がるため、1kgより少なくなります。

Aさんがより効率的に内臓脂肪を燃焼させるには、有酸素運動の時間を増やすことをおすすめします。

息が軽く弾む程度のウォーキング、サイクリングなどの有酸素運動を30分以上継続して行うと良いでしょう。

メリット2 飲み薬であること

注射による治療と違って、飲み薬であることから苦痛や努力の必要がなく継続治療しやすいでしょう。

メリット3 薬局で購入できること

病院で処方箋を受け取る必要がなく、薬局で購入できるため入手が容易。

ただし、要指導医薬品のため、薬剤師さんがいる薬局しか購入できません。

次にデメリットまたは疑問点ついてです。

デメリット1 炭水化物過多の人には効果が少ない?

メリット1の裏返しでもありますが、炭水化物好きで多く摂取している人には効果が小さい可能性があります。

炭水化物好きのBさんをみてみましょう。

1日総摂取エネルギーはAさんと同じ2400kcalですが、炭水化物が多いため脂肪エネルギー比率は小さく16%とすると、1日総脂肪摂取カロリーは384kcal。

アライを服用すると25%が排泄されるから、脂肪排泄カロリーは96kcal。

この減少したカロリーが、もし全て内蔵脂肪燃焼に置き変わったと仮定すると、脂肪組織1kgは約7000kcalだから、1ヶ月で96×30÷70000≒0.4kgの減少にとどまります。

排泄された脂肪が全て内臓脂肪組織の減少につながるわけではないことを考慮すると、0.4kgよりさらに少ないため、コストパフォーマンスが低いように思います。

 デメリット2 必須脂肪酸と脂溶性ビタミン不足になる?

脂肪はグリセロールという骨格となる分子に、脂肪酸が結合して構成されています。

脂肪の性質は脂肪酸によって異なります。

健康維持に欠かせない脂肪酸のうち体内で合成できない脂肪酸(リノール酸、α‐リノレン酸、アラキドン酸)は必須脂肪酸とよばれ、食品から摂取しなければなりません。

それ以外にも、血液をサラサラにする働きのあるDHAやEPAなどの脂肪酸もほとんど体内で作られることはないため、食品から摂取する必要があります。

このように食品から摂取しなければならない脂肪の多くは不飽和脂肪酸で、サバ・イワシ・マグロなどの魚や、えごま、あまに、なたねなどの植物に多く含まれています。

一方、飽和脂肪酸は牛肉やパーム油などに多く含まれていて、近年の日本では過剰摂取の傾向です。

牛肉などを多く食べ、魚などをあまり食べない人がアライを服用することにより、必要な不飽和脂肪酸が欠乏しないか心配です。

また、アライ服用によるビタミン不足も懸念されます。

ビタミンは、水に溶けやすく、油脂には溶けにくい性質を持つ水溶性ビタミンと、水に溶けにくく、油脂に溶ける性質を持つ脂溶性ビタミンに分類されます。

前者にはビタミンC、ビタミンB群、後者には、ビタミンD、A、K、Eがあります。

また目や肌、生活習慣病で欠乏しやすい栄養素ルテインも脂溶性です。

特に野菜の量が少ない人がアライを服用して、脂肪とともに大切な脂溶性ビタミンが排泄されて欠乏しないか心配です。

デメリット3 油漏れ、脂肪便

肛門から便や油が漏れることがある。

このような症状はアライが便として脂肪を排泄するため起きうる副作用です。

おむつ、ナプキン、便漏れパッドの活用が推奨されています。

以上内科医の視点から見た、内臓脂肪減少薬アライ服用によるメリット・デメリット(疑問点)をそれぞれ3つ挙げました。

あくまで製品情報サイトの情報から考察したため、記述した以外のメリット・デメリットや実際服用した状況と異なる点もあり得ることを申し添えます。

いずれにせよ、健康は適切な量とバランスのとれた食事、適度な運動と十分な睡眠が基本であることを念頭に毎日を過ごしましょう。


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