みなさんはこんな経験はありませんか?
「もうすぐ健康診断があるけど、引っかかるの嫌だな、今から何とかならないかな?」
「健康診断で引っかかっちゃった!これって何がどう悪いんだろう?」
今回は、健康診断の糖尿検査についてお話します。
健康診断で引っかからないようにするための注意点、引っかかった場合の対応方法も含めて解説しました。
糖尿病で診察を受けているかたにもお役に立てるものと思います。
健康診断での糖尿検査は、尿糖と血糖の2項目、あるいはHbA1cも加えた3項目が実施されます。
糖尿病の精密検査では、ほかにもいくつかありますが、今回はこの3つに的を絞ります。
はじめに血糖検査について。
血糖検査は、糖の流れについて知ることで大変理解しやすくなりますので、ここで少し解説します。
血糖とは、その名の通り血液中に含まれるブドウ糖のことです。
ひとのからだの血糖はおよそ70から100mg/dl。
体重65kgの人では、体を流れる血液中には、40から50g、およそ大さじ5杯のブドウ糖が含まれています。
このひとが糖尿病でなければ、ラーメン・ライス(ブドウ糖に換算して100g)を食べてたとしても、数時間たてば、血糖値は100になるわけです。
では、食べて吸収された100gのブドウ糖はどこへ消えたのでしょうか?
口から入ったラーメンとごはんは、胃や腸で細かく消化されて、ブドウ糖に変わり小腸から吸収されます。
吸収されると門脈という血管内に入ります。
この門脈という血管は小腸と肝臓をつなぐ血管。
吸収された栄養素ははじめに肝臓にたどり着くわけです。
肝臓にたどり着いたブドウ糖は、一部は取り込まれて貯蔵されます。
残りのブドウ糖は、血液の流れに乗って全身にばらまかれます。
ばらまかれたブドウ糖は、筋肉に取り込まれ貯蔵されますが、余分なブドウ糖は、内臓脂肪などの脂肪組織に取り込まれて脂に変えて蓄えられます。
炭水化物のとりすぎで内臓脂肪が増えるのは、このためです。
ブドウ糖が、肝臓、筋肉、脂肪組織などの臓器に取り込まれるのは、膵臓から分泌されるインスリンの作用によります。
このためインスリンの量が少ない、インスリン分泌不全の場合血糖が上昇します。
また、インスリンが十分あっても肝臓、筋肉、脂肪組織でインスリンがしっかり働かない場合、これをインスリン抵抗性といいますが、この場合も、糖は臓器の中に入ることができず、血糖が上昇します。
つまりインスリン分泌不全とインスリン抵抗性が、糖尿病の2大要因。
インスリン分泌不全の原因は、遺伝が大きく関与します。
2型糖尿病の殆どは、血の繋がった人に糖尿病があります。
欧米人に比べて、日本人はインスリン分泌不全の人が多いと言われています。
一方、インスリンが分泌されていても、その作用が不十分なインスリン抵抗性は、運動不足などの生活習慣の影響が大きく関与します。
運動の役割は、食べたカロリーを消費するだけでなく、インスリン抵抗性を改善することです。
ウォーキング程度の運動でも、インスリンの効きが良くなって、血糖値は下がります。
また運動によるインスリン抵抗性改善効果は48時間持続することがわかっていますので、最低2日に1回は運動したいものですね。
次は食生活に関しての注意点。
炭水化物を食べて大量のブドウ糖が、いっきに小腸から肝臓に流れ込むと、肝臓はブドウ糖を処理しきれません。
このため糖は肝臓をスルーして内臓脂肪に取り込まれます。
早食いが脂肪太りしやすいのは、この理由です。
急激に小腸から糖の流入を防ぐためには、
① 炭水化物の食べ過ぎは控え
② ゆっくりよくかんで食べる
③ 野菜などの繊維質も十分に摂取する
などを心がけましょう。
以上がブドウ糖の流れと糖尿病の成因についてです。
健康診断は前日の夕食を食べたあとは、水以外飲んだり食べたりしない絶飲食で行われます。
その状態で検査した血糖値を、空腹時血糖といいます。
健康な人の空腹時血糖はおよそ70から100mg/dlにとどまります。
ですから、空腹時血糖が100を超えたら病院に受診することをおすすめします。
100-125mg/dlの場合は、糖尿病ないし糖尿病予備軍の可能性があります。
病院に受診すると、
・再検査して、生活習慣を改善しつつ経過観察 あるいは、
・精密検査ーブドウ糖負荷試験ーを行うことになります。
空腹時血糖値が126mg/dl以上の場合は、糖尿病の診断基準の一つを満たしているため、糖尿病と診断される可能性が高くなります。
早めに病院に受診しましょう。
今までお話した血糖値は、すべて食事を摂る前に測定した血糖値です。
健康診断項目からは外れますが、食後の血糖についても考えてみましょう。
食後の血糖は、食後何時間血糖値とか、随時血糖値という言い方をします。
健常者では、食後でも140mg/dlを超えることは通常ありません。
一方、随時血糖値が、200mg/dl以上であった場合、糖尿病と診断される可能性が高くなります。
そして、140から200の間は、糖尿病あるいは糖尿病予備軍の可能性があります。
以上より随時血糖140を超えた場合は、糖尿病専門医に受診することをおすすめします。
次は尿糖についてです。
尿糖とは血液中の糖が尿中に排泄された糖のことです。
血液中の糖は、腎臓で血液から濾過される過程で水分とともに体に再吸収されますが、血糖が増加して限界を超えると、尿糖として体外に排泄されます。
一般的に、血糖値が160〜180mg/dLを超えると尿に糖が排泄されるといわれています。
このため、尿糖を指摘されたら、糖尿病あるいは糖尿病予備軍の可能性が高いため、糖尿病専門医を受診しましょう。
最後にHbA1cについてです。
HbA1cは健康診断に必須の検査ではありませんが、糖尿病診療の際には欠くことのできない検査です。
HbA1cとは、赤血球に含まれる赤色のたんぱく質であるヘモグロビンのひとつの分画に、ブドウ糖が結合したものの割合です。
このため血糖値が高い状態では、HbA1cも高くなります。
過去1-2ヶ月の間の血糖コントロール状態を示す指標として用いられ、慢性的な高血糖の有無を推定することができます。
一般に健常者ではHbA1cは4.5から5.5%の値をとります。
HbA1c6.5%以上では糖尿病の可能性が高くなります。
早々に病院に受診しましょう。
5.6から6.4%では糖尿病あるいは糖尿病予備軍が疑われます。
病院に受診して、ブドウ糖負荷試験を受けたり、生活習慣改善指導を受けることをおすすめします。