橋本病は、慢性甲状腺炎とも呼ばれ、成人女性の10人に1人、成人男性の40人に1人にみられる非常に頻度の高い、原因不明、甲状腺機能低下症を引き起こす病気です。
ただ、橋本病だからといって、全員の甲状腺ホルモンが少なくなるわけではなく、橋本病のうち甲状腺機能が低下するのは4人に1人です。
だからといって、決して橋本病を放置して良いわけでは有りません。
というのは、橋本病であることを知らずに放置していたり、薬を服用している人が中断したりすると、ときに命にも関わるなどの、様々な症状が現れてくる、油断すると危険な病気だからです。
甲状腺は首の前の喉仏のすぐ下にあります。
蝶々が羽を広げたような形をした、厚さ1cm、横幅5cm、重さ20gの、柔らかで小さな臓器です。
外から見ても、手で触ってもほとんどわかりません。
甲状腺のはたらきは甲状腺ホルモンを合成分泌することです。
甲状腺ホルモンの役割は大人では
① 新陳代謝の促進
② 交感神経の活性化
この2つのため、甲状腺ホルモンが少なくなると、
①肌がカサカサして髪の毛が抜ける
②寒がりで手足が冷える
③食欲がなく便秘になる
④むくんで体重が増える
⑤体がだるくてやる気が起きない
などの5つの症状がよく現れます。
この5つの症状は、日常的に経験する症状なので、気のせいにして病気として捉えなかったり、他の内臓の病気と勘違いして、発見が遅れてしまうことが大変多い病気です。
よく、「橋本病にいつなったのですか?」という質問を受けることがあります。
実際いつから橋本病になったか特定することはできません。
では、知らずに気づかないうちに橋本病を見過ごしたり、あるいは甲状腺機能が低下したのに、5つの症状に気づかなかった場合どんなことがおきてくるのでしょうか?
橋本病で甲状腺機能低下症になっても気づかずにいると、つかれやすい、やる気がない、集中力が低下するなどの症状が続きます。
このような症状はうつ病と大変良く似ています。
このため患者さんの中にはうつ病として抗うつ薬を飲みながら、長期間病院に通うことになる人がいるほどです。
特に若い世代で、うつ病と勘違いすることが多いと言われています。
一方、中高年世代ではどんな症状になるのでしょうか?
中高年では、表情が乏しく、ぼーっとするようになり、意欲が減退して、物忘れが多くなります。
このような症状は認知症の症状と大変良く似ているため、認知症として治療を受けることになる人もいます。
このように、甲状腺機能低下症は体の不調だけでなく、こころや精神の不調に姿を変えて発病することがあることを覚えておいてください。
粘液水腫性昏睡とは、重度の甲状腺ホルモン不足によっておこる病気です。
症状は、体温が低下して、意識障害が生じて、二酸化炭素がたまる呼吸不全や心不全が特徴で、けいれんなどの神経症状が起こることもあります。
粘液水腫性昏睡は非常に重症で危険な状態ですので、3人に1人がお亡くなりになると報告されている怖い病気です。
では、粘液水腫性昏睡はどのような人に起きやすいかというと、服用するように指示されている甲状腺ホルモン薬を、長期間飲むのをやめたり、飲むのをわすれたりしたときに発症します。
医師の指示通りに医療を受けていれば、粘液水腫性昏睡になることは通常有りませんので、安心してください。
橋本病で薬を飲んでいる人は、自己判断で薬をやめたり減らしたりせず、定期的に担当医を受診して規則的に服薬をおこなうことが大切です。
橋本病の経過中には、甲状腺ホルモンと関係がない他の病気が現れることがあります。
悪性リンパ腫もその一つです。
甲状腺の悪性リンパ腫は、甲状腺がんの一つで、橋本病をベースにして発生する病気です。
60歳〜70歳代の女性に多くみられますが、症状は様々です。
1〜2年かけて少しずつ大きくなるケースもあれば、1~2ヶ月で、急に首が腫れて大きくなり、呼吸困難を伴うケースもあります。
甲状腺リンパ腫の発症頻度は高くはありませんので、過度に心配する必要はありません。
必ず守っていただきたいこととして、橋本病は、薬を服用するしないにかかわらず、定期的な病院受診を欠かさないようにすることと、甲状腺が急に大きくなるようでしたら、ためらうことなく医療機関での診察を受けていただくことです。
橋本病であっても、甲状腺機能が正常であれば明らかな不妊の原因にはならないといわれていますので、妊活中の方もご安心ください。
ただし、橋本病のある妊婦さんは、橋本病のない妊婦さんに比べて、わずかですが流産や早産が多いとの報告があります。
その理由は、橋本病は妊娠前に甲状腺機能が正常であっても、妊娠経過中に甲状腺機能が低下しやすいことが、ひとつの原因ではないかと考えられています。
妊娠初期は、胎児はまだ自分で甲状腺ホルモンを作ることができません。
このため母体からの甲状腺ホルモンをもらって成長しています。
母体からの甲状腺ホルモンは胎児の発達に大切な働きをしており、妊娠初期に、甲状腺機能低下症の状態にあると、子どもの発達に影響するとの報告があります。
妊活中の方、妊娠中の方に甲状腺機能低下の傾向があっても、甲状腺ホルモン薬の服用を開始すれば、流産、早産のリスクは回避できますので、ご安心ください。
橋本病であっても、甲状腺機能が正常であれば明らかな不妊の原因にはならないといわれていますので、妊活中の方もご安心ください。
ただし、橋本病のある妊婦さんは、橋本病のない妊婦さんに比べて、わずかですが流産や早産が多いとの報告があります。
その理由は、橋本病は妊娠前に甲状腺機能が正常であっても、妊娠経過中に甲状腺機能が低下しやすいことが、ひとつの原因ではないかと考えられています。
妊娠初期は、胎児はまだ自分で甲状腺ホルモンを作ることができません。
このため母体からの甲状腺ホルモンをもらって成長しています。
母体からの甲状腺ホルモンは胎児の発達に大切な働きをしており、妊娠初期に、甲状腺機能低下症の状態にあると、子どもの発達に影響するとの報告があります。
妊活中の方、妊娠中の方に甲状腺機能低下の傾向があっても、甲状腺ホルモン薬の服用を開始すれば、流産、早産のリスクは回避できますので、ご安心ください。
機能が低下する橋本病に、機能亢進症状とはどういうこと?との声が聞こえてきそうですが、間違いでは有りません。
橋本病の経過中に、甲状腺ホルモンが過剰になる病気が起きることがあります。
それは、無痛性甲状腺炎です。
甲状腺に痛みは伴わないため、無痛性甲状腺炎と呼ばれます。
無痛性甲状腺炎は、なんらかの原因で炎症が起こり甲状腺の細胞が壊れて、甲状腺内部に蓄えられていた甲状腺ホルモンが血液中にあふれ出てくる病気です。
血液中の甲状腺ホルモンが増加しているため、病気のはじめのうちは動悸、暑がり、体重減少など、甲状腺機能亢進の症状が現れます。
甲状腺機能亢進症の症状は(甲状腺サムネイル)別の動画で詳しく説明しましたので、そちらを参考にしてください。
その後、一時的に甲状腺機能低下症となることがありますが、数か月以内に甲状腺機能は正常化し、症状はなくなります。
無痛性甲状腺炎が起きる原因は不明ですが、橋本病を持っている人に多く見られる病気です。
特に出産後に起きやすいと言われています。
出産後体調のよくない女性に対して、「産後の肥立ちが悪い」ということがありますが、その一部は無痛性甲状腺炎が原因だと考えられています。