GLP-1は痩せるための鍵ホルモンー食事法からリベルサス・オゼンピック選択法まで

今、“やせホルモン”として大注目のGLP-1

GLP-1は、誰もが小腸から分泌されているインクレチンと呼ばれるホルモンの一種です。

なぜGLP-1で痩せることができるのでしょうか?

長年の多くの研究から次のような理由が明らかになっています。

理由1 脳の満腹中枢が刺激される

理由2 胃の運動が緩やかになり満腹感が持続する

理由3 脂肪細胞に作用して痩せやすくなる

その上血糖値の上昇もおさえてくれる頼りになるGLP-1。

たくさん分泌してくれたら嬉しいですね。

そのための良い方法はないでしょうか?

実はそれが可能となる方法があるのです。

本コラムではGLP-1に関連して、前半に食事法によるダイエット、後半に肥満をともなう際の治療薬について解説します。

ダイエット〜“やせホルモン”パワー全開!~

「空腹をがまん!」

「食べたい物を食べられない!」

「時間とお金がかかる!」

ダイエット法というと、このようなことが相場。

ここでは「あしたが変わるトリセツショー」NHKでも放映された簡単な方法をご紹介します。

ステップ1 ごはんの前に肉や魚などたんぱく質のおかずを先に食べること!

ステップ2 たんぱく質を食べたらごはんを5分我慢!

ステップ3 5分たったら好きな順番でOK!

野菜をたんぱく質と一緒にごはんの前に食べれば、ダブルの効果!

食べる順番を変えるだけで劇的な変化が起きることが、GLP-1などのインクレチン研究第一人者である岐阜大学医学部附属病院 矢部大介教授が番組で紹介されました。

ごはんを食べる前に肉や魚、大豆などのたんぱく質を食べるだけで、ダイエットに効果があるなんて嬉しいですね!

「これなら私でもできる!」

ぜひぜひ、今日からでも実践してみましょう!

GLP-1受容体作動薬は肥満をともなう際のキードラッグ

上記のような生理作用を持つGLP-1をおくすりとしたものがGLP-1受容体作動薬(以下GLP-1)で成分名セマグルチドとよばれ、リベルサス、オゼンピックという商品名で発売されています。

これらのおくすりは、日本では現在のところ2型糖尿病治療薬として用いられています。

GLP-1が「満腹になりやすい」、「満腹中枢が刺激される」作用をもつことから、肥満をともなう場合に利用すれば、本来の血糖低下作用に加えて、体重減少が期待できるため理にかなった治療法と考えられます。

GLP-1は、さらに様々な作用をもつことが解明されてきました。

腎臓への作用・・・体にたまった余分な塩(ナトリウム)の排出を促し、それとともに余分な水分を排泄する利尿作用。

脂肪への作用・・・① 過剰なエネルギーを脂肪として蓄える白色脂肪細胞に作用して、脂肪分解を促進。② 体内の過剰なエネルギーを熱に替えて放出する褐色脂肪細胞に作用し、熱産生を促す→余分な脂肪を燃焼。

その他、心臓、血管、肝臓、骨格筋、免疫系などに対する作用も研究により徐々に解明されているところです。

リベルサスとオゼンピック どちらを選択したら良い?

はじめにそれぞれの薬剤の特徴を検討してみましょう。

リベルサスは錠剤です。

服用の際に注意点が3つあります。

① 毎日起床時に服用

② コップ半分程度(約120mL以下)の水で服用

③ 服用後30分以上は飲食しない

飲み薬なので注射に比べて服薬のハードルは低いことがメリットでしょう。

ただ、毎日の起床時に飲み忘れてしまいがちになることと、朝忙しい時でも服用後30分以内に朝食をとれないないことがデメリットになるかもしれません。

一方、オゼンピックは自宅で自分で打つ注射製剤です。

注射というと「痛い」、「面倒」という先入観を抱くひとが多いと思いますが、どちらも杞憂にすぎないと思います。

わたしはよく患者さんに注射製剤について、

「針をさすので痛くないことはないが、蚊にさされるよりは痛くない」

「慣れれば歯を磨くよりはるかに簡単、1分 で終了」

と説明しています。

オゼンピック注は1週間に1回決められた曜日に注射するだけです。

しかもうち忘れて数日以内でしたら気づいた時点で注射し、その後は再びあらかじめ決められた曜日に打つだけです。

忘れっぽい方にはありがたいおくすりですね。

血糖改善と体重減少の効果は、オゼンピックの方が上回ることもメリットでしょう。

GLP-1の副作用について

「コインの裏表」という言葉がありますが、くすりの作用副作用もこの関係と同様にとらえていただくとわかりやすいと思います。

GLP-1の主作用のひとつは「胃のぜん動運動を抑制し、摂取した食物の胃からの排出を遅らせる」です。

この主作用の裏は「すぐに満腹になる」「胃もたれ」「腹部不快感」「吐き気」「便秘」という副作用です。

しばしば「胃薬ください」とおっしゃる患者さんに、わたしは「そういう作用のおくすりです」とお話します。

すると患者さんは笑ってうなずいておられます。

もちろんこのような方の中にはおくすりを減量することもありますが、まもなく症状は消失することが多いようです。

リベルサス錠は3mg、7mg、14mgと3段階に、オゼンピック注も同様に3段階に投与量が分かれています。

どちらもきめ細かく最適な投与量を選択しやすく、副作用が出現する手前の最大有効量を設定しやすいというメリットがあります。

その他まれに膵炎(激しい上腹部痛)、低血糖などの副作用が報告されています。

定期的に受診していただくことが必要です。

リベルサス錠・オゼンピック注は2型糖尿病の治療薬です。肥満症単独では保険適用が認められていませんのでご注意ください。

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